出会いは小6だったと思う。
夏だけお試しで塾にかようこととなったmory少年は、知り合いが誰もいない孤独感と授業の分からなさで、早く家に帰ってPSの「アークザラッド2」をしたいな、と郷愁の念に囚われていた。
そんな時である。
休み時間に後ろの席の少年たちがワイワイやってるな、と聞き耳を立てていたら、
「俺、土地欲しいな」
という声が聞こえた。塾に通っているような優秀で早熟な子たちは、この若さでもう不動産を転がしているのか、と戦慄した私が降り返って見たものは、
「島」
というカード。
なんだカードか思いながらも、その時みた「島」の絵は綺麗だな、と思った。
他人A「これと替えて」
他人B「ケルドの大将軍強いよ」
などの会話を聞いているうちに、次の講義が始まった。
数時間して疲れ果てたmory少年は帰路についた。
家に帰って「アーク2」をやったら、北の塔でロマリア四将軍のひとり『アンデル』に、デスを連発されて全滅した。
やっぱ将軍ってのは強いんだな、となんとなくさっきのカードゲームのことを思い出した。
(なんて名前のゲームか見ておけばよかった。今度おもちゃ屋で探してみようかな。)
数日で忘れた。
まだインターネットは普及しておらず、情報源は専ら友達か雑誌の時代である。
自分の小学校では、そのカードゲームは誰もやっていなかったのだから知らなくて当然だ。
さらに読んでた少年ジャンプやVジャンプにも、このゲームが紹介されたことはなかった。
当時、我が家はお小遣い制ではなかった。小遣いを要求したところ、親に「何か欲しい時には言いなさい」と言われていた。
これは何でも買って貰えると意味ではなく、
「漫画買うからお金頂戴」
「漫画ばかり買っちゃだめ!」
こんな感じである。
というわけでお小遣いはお年玉の一部を持つことで賄われた。一年の計はまさに元旦にあったのだ。その年のお金は大体が「YAIBA」完全版とPSの攻略本に消えていた。例えそのカードゲームを見つけたとしても、始めることまではしなかっただろう。
ときは半年ほど流れて中学一年生。
集団登校のシステムは廃止され、各々好き勝手に登校してよくなったので、我々は近い町内の友達で集まって通学していた。
「面白そうなカードゲームがある」
ある日友人のN君が言った。N君は面白いものとか流行りのものを見つける能力が学校屈指であり、我々の集団を引っ張っている存在でもあった。
「やらん?」
「やる!」
何故だか『あのカードゲーム』だと予感していた。
そのカードを見てもいないのに。
帰宅後すぐさま近くのおもちゃ屋に買いに行った。
手に取り、初めてタイトルを見る。
『Magic The Gathering』