第1版 ~丁髷は永遠の証~

『奈落の王と蒼穹のドレイク』


 最初に購入したのは5版のスターターパックであった。T君と買いに行った後、その足で友達の家に行き開封、ルールブックなど後回しで、まずは入っていた60枚のカードを眺めた。

 

「蒼穹のドレイク」が羽ばたく美しい水辺


「蠢く骸骨」は不気味であり、そもそも漢字も読めない


「盾持ち」の背中には悲壮感が漂い、学校で上級生が合唱していた『オーマイソルジャー』が脳内再生される


「永遠の戦士」はなぜか丁髷(ちょんまげ)であり


「忘却」は鼻くそを食っているようにしか見えなかった。

この「鼻くそ」がレアカードであったことは後に明らかになる。



 とにかく圧倒的な世界観に魅入られた二人は、いざプレイせんとルールブックを読み始めた。

 

・・・


・・・まったく理解できない・・・


・・・とりあえずプレイして覚えよう。

 最初に召喚したクリーチャーは「悔悟せる鍛冶屋」であった(ちなみにこの漢字も読めなかった)。始める前に、タップや召喚、パワー、タフネスについては理解したが、能力に関してはさっぱり。


『再生』ってどうなるの?

破壊?埋葬?

『バント』って何がいいんだ?


当然、場に出た「蠢く骸骨」と「盾持ち」は戦場に棒立ちであり、この棒立ち状態のクリーチャーはお互いの場に増えていき不毛な睨みあいを始めるのであった。かろうじて理解された能力、『飛行』を持つ「メサ・ファルコン」と「蒼穹のドレイク」のみが悠々とプレイヤーをつついていた。

 美しいイラストも相まって「蒼穹のドレイク」がすぐお気に入りになったのは想像に難くない。


 このときはクリーチャーを狙って攻撃できないことや、ターン終了時にタフネスが元に戻ることなどが理解できず、クリーチャーのダメージはいちいちカウントしていた。さらにエンチャント(場)、エンチャント(クリーチャー)、ソーサリー、インスタント、インタラプトなどは区別がつかなかったので、全部同じように使っていた

 



 家に帰りルールブックを熟読したが、やっぱりいくつか理解できない点があった。結局しばらくは妙ちきりんなローカルルールのもとゲームは行われることとなる。

 

 その後パックに入っていたカードを見直していたら、あるカードに強烈に心を奪われた。

 

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この髑髏が三つ並んだマナコスト表示も素敵で、初陣で散々活躍した『飛行』に加えて『トランプル』、そしてP/T7/7


・・・そう

「奈落の王」である。

 デッキの他のクリーチャーの大半が1/12/2であったため、この王が圧倒的な戦力であることは容易に理解できた。しばらく私のデッキはこの王様と、あるもう一枚のカードで相手を打ち倒していくこととなる。

 

 ちなみに最初に入っていたレアカード3枚は、前述の「鼻くそ」「王様」に加え、「ハルマゲドン」であった。この気付かれもしないまま封入されていた白の高級レア「ハルマゲドン」の行く末についてはまたの機会に。

これも運命なのか、我々がマジックを始めた年は同名の映画『アルマゲドン』も公開されていた。

勿論、観た。

勿論、号泣

懐かしい思い出である。