第9版 ~単色にあらねば…~

『デッキにあらず!』


 間も無く中学2年にならんとする春、N君のゴブリンデッキが完成した。その爆発力に当初は誰も太刀打ちできなかった。

 我々のデッキは色が2色程度に絞られていたとはいえ、割と重めのカードも含まれている遅めのデッキであった。かたやゴブリンはその性質上だいたい3マナ以下、かつ赤の単色となるため、デッキとしての完成度が追随を許さなかったのだ。

勿論、完全体となるようなパーツ(『呪われた巻物』や『ゴブリンの従僕』)があったわけではないが、この赤単の早さは皆のライフを序盤で削り切るのに十分であった。


 程なくして私も単色を決意する。もちろん黒だ。塾の友達が黒ウィニーを辞めたため色々パーツを交換してくれたからだ。ちょうどゴブリンにも勝てないし、爆発力が必要だと思っていた。もはや安定のための白を混ぜる気はサラサラ失せていた


 取り敢えず暗黒の儀式は4枚集め、後は軽いクリーチャーを放り込んだ黒単が完成する。


・・・


「た、楽しすぎる」


1ターン目から儀式にて飛び出すクリーチャー。

ブロックされないシャドー

豊富な除去呪文

ゴブリンとも渡り合えて、すっかりこの黒ウィニーの虜になった。


 このときから校区には単色ウィニーブームが巻き起こる。しかしこれも実に良い変化であった。


 ときは速攻系クリーチャーが跋扈する『ラースサイクル』。優秀な彼らは比較的容易に、そして安く手に入れることができた。


かたやウィニーキラーとなるコントロール系はパーツが非常に高価であり、また同様に多色ランドも高価であった。

例えば上の2枚を1枚ずつ買うだけで5000円は下らなかった。


単色ウィニーは手軽に強くなるための最も良い手段であったのだ。


こうしてMtG界空前の単色ブームに乗っかって、我らが校区でもほぼ全員が単色デッキ使用者となったのである。