「じゃあ調べてきたこと教えて」
「えーと、殺害された社長は当日家から出ていません。門の横には守衛室があるんですけど、守衛は社長夫人が同窓会に行ったのと、専務が一度来て帰ったのを見ています。実は秘書も来てたそうで、玄関で家政婦と話をしています。秘書は専務が部屋から出て帰っていくのを見ています。家政婦は秘書が帰った後に社長にコーヒーを淹れてて、このときは生きていたと証言しています。その後、夕方に常務が社長に電話をかけたら出ないとのことで守衛に連絡がいきました。そして丁度帰宅した夫人と部屋に行き、死体を発見したわけです。」
「ふーん…守衛は秘書を見ていないことをなんて言ってる?あとその日予定が急に変わった人っている?」
「守衛はやはり他の人は見ていないと言っています。予定と違った行動は…家政婦は買い物にいくのを雨だから辞めたみたいですよ。社長の手帳には、その日に専務と企業方針の相談、その後秘書とスケジュール調整する予定も書いてありました」
「そっか~」
「どう思います?私はこの中に犯人がいると思うんですよね」
「そうだね、多分どっちかだね」
「そうでしょ、やっぱこの中に……えっ!『どっち』か?」
「でもどっちかは分からないね、あてずっぽうになっちゃう」
「え?え?えーっ!こんだけで分かったんですか!」
「いや想像だから根拠はないけど。まあ、最後は警察が科学的捜査で突き止めてくれるよ、証拠がないと机上の空論」
「びしっと最後まで当ててくださいよ~」
「無理だよ、これ自体も所詮推量、実際にはもっと変なことが起きてたかもしれないし」
「安楽椅子探偵ってこんなもんですか、実際?」
「こんなもんじゃない、実際」
『クルード』や『修道院殺人事件』の
ような推理ゲーム。
箱はマッチ箱くらい。
そのサイズが示す通り、ゲームとしてはお手軽な部類にはいる。
7人のカードが2枚ずつ。
この中からランダムに「犠牲者」と「犯人」が決まる。
犯人カードは裏向き。
残りのカードはそれぞれプレイヤーに配られる。
これを交換したりして皆の手札に1枚しかない犯人を当てるのだ。
皆の手札が4枚になるように、プレイ人数に合わせて、人物カードの他に「探偵カード」が数枚投入される。
手番に出来ることは、
1.右の人と手札を1枚交換
2.手札から1枚場に出し、その効果を発動
3.犯人当て(失敗したら脱落)
この中の2がゲームを面白くする。基本的に自分のみ持っていた情報を敢えて公開する訳だから、当然自分への見返りも大きい。全員に効果を及ぼすものであっても、『プエルトリコ』のように使った人にはボーナスがある。
探偵カードも同じような使い方。人物を公開しない分、恩恵も控えめ、と思いきや強力な能力もあるので馬鹿にならない。
さて何故タイトルが「あてずっぽう」なのか?
おそらくピンポイントで特定する前に「犯人当て」の勝負にでることが多いからだろう。
このゲームは誰かと誰かの交換で情報を得ることがメイン。
誰かひとりだけ情報を得る効果は少ない。
必然的にその情報交換機会に恵まれなかった人は情弱無知となる。
この点はお手軽ゲームなので仕方が無いが、ややバランスが悪い。
一方、このシステムのため誰かひとりだけが犯人に近づくことは少なく、終局前はだいたい2人のプレイヤーが犯人候補を2人くらいに絞れていることが多い。ここが勝負所で、一巡待って確実な犯人を探すか、他の人に当てられる前に勝負にいくか、となるのだ。
だから「あてずっぽう」なのだ。
まあ、直接制作者に伺った訳ではないので、結局この持論も
「あてずっぽう」である。信用しないように。
「最後は運かよ!」と思う人がいるかもしれないが、そこまで至る過程は結構面白い。
例をいくつか挙げてみよう。
初手から同じ人物を2枚手に隠しておければ、他人への強烈な牽制になる。2枚とも見えないと最後のあてずっぽうで言いたくなる。
中盤以降に他人から貰えるカードは犯人でない可能性が高い。前述のように、このゲームは情報獲得と同時に、自分だけの情報を秘匿することも重要なので、手から出てくるカードは他人がいらないと思っている、つまり犯人でない可能性が高い。
まあ絶対ではないので心理戦だ。
あとは両サイド以外の情報をいかに得るか。カードの特殊効果が確実だが、ゲーム中の言動や「あてずっぽう」で挙げた犯人の名前などでも推理していこう。
とまあ、本格推理ゲームというよりは、情報の不均等を運で補えるパーティー推理ゲームのような感じ。
ワイワイと推理するのが楽しいのだ。
持ち運びが容易なのもグッド。
管理人は推理モノが好きであり、特に「森博嗣」氏のミステリーが好きである。個人的にはVシリーズがオススメである。
有名どころではあるが、興味にある方は是非御一読を。