ねことねずみの大レース

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「君たちチーズは好きかい?」

「もちろんだよ!」

「ちょうど良かった。少し行ったところにチーズが沢山置いてあったんだ。とても食べきれないから教えてあげようと思ってさ」

「わぁ、ありがとう」

 

ネズミたちはチーズを食べに行くことにしました。でも半分のネズミは巣を守るため留守番です。彼らは仲間にチーズを持ち帰ってくれるようお願いし床に就きました。



 

「やあ、こんにちは」

「あ、昨日の。チーズを食べに行った仲間は元気?」

「うん。今で半分ペロリってとこ」

「へーえ、まだ半分もあるんだ」

「君たちは来ないの?少しくらい巣を空けたって大丈夫だよ」

「そっか・・・やっぱり僕らも行っていいかな?」

「もちろんさ。みんな向こうで待ってるよ」

 

残りのネズミたちもチーズを食べに行くことにしました。皆でチーズを持って帰ってこれば、しばらく食料に困らないでしょう。太っちゃうかもしれないな、と思いました。


 


「やあ、こんにちは」

「あ、この間はありがとう。おかげでお腹いっぱいだよ」

「全部ペロリ、だね」

「うん、やっぱり太っちゃったよ」


そう言って2匹のネコはにゃあにゃあと笑うのでした。

Rule&Analysis

 2003年のドイツ子どもゲーム大賞。

 このジャンルでは、あちこちのメディアでも取り上げられる名作。子ども向けボードゲームの顔といっても過言ではないだろう。


しかし侮ることなかれ。

大人でも十分面白いのだ。

 

ルールはタイトルから察することができるように、チーズを求めるネズミがネコから逃げるというもの。


 追いつかれるとネコに食べら・・・いや、捕まってしまう

子ども向けゲームなので、食物連鎖や生命の尊さ、世界のヒエラルキーなどをレクチャーしたい父兄以外は『トムとジェリー』の感覚で楽しもう。

 道々にある部屋にはチーズが置いてあって、当然遠く程大きいチーズが置いてある。しかし当然ネコに捕まる可能性も高くなる。たくさんのチーズを得たプレイヤーの勝ち。

これが初期配置。うじゃうじゃしているネズミがかわいい。

しかし実写版で見たら悶絶ものだろう。


 プレイヤーは手番にサイコロを一回振って、好きなネズミを一匹動かすだけ。




サイコロの目は、2、3、4、5、と「1+ネコ」がふたつである。

言うまでもないだろうが、「1+ネコ」が出ると、ネズミが「1」動くほかにネコも動く。ネコの動く距離は、次のネコの顔のマスまで。ボードを見ればわかるが、最初は1マスずつなのだが、2週目から2マスごとになっている。

2週目は一足飛びで迫ってくるのだ

さらに、スタート地点の家の前にネコが来たときは、まだ中に残っているネズミは捕まってしまう。1匹たりとも見逃さない。

もはや侵略者である。

 

 そんなこんなで家から飛び出したネズミは、チーズと安住の地を求めて走り出すのだ。


 よっぽど運が悪くない限りは、皆1匹は6点のホールチーズのもとに辿り着けるだろう。

 問題は残りの処遇。

 一番大きいホールチーズと2番目の4点チーズでは2点の差がある。以降は1点ずつしか違わない。つまりそれだけホールチーズは得なので、理想はホールチーズを2個取っておくこと。ただこの6点分は、4点チーズと3点チーズの計7点でまくられてしまう点には注意。つまりホール2個得ても他のチーズが取れなければ負ける可能性がある。

 ネコの足が速いときは少数精鋭、遅めのときは全員をそれなりに進めていくのが理想となるが、ネコの速さは所詮1/3の確率に左右されるので判定は難しい。まあ、確率とかは深く考えないで楽しくプレイしたらいいじゃないか。子ども向けだもの。

 「子ども向け」でサイコロの出目のウェイトが大きいものの、ネズミの進め方というわかりやすいジレンマをしっかりと盛り込んである。テーマも「追われる」ものなので、必然的に盛り上がる。パーティーゲームにうってつけで、誰がやっても楽しい家庭的名作であることに疑いの余地はない。

 木製のコンポーネントも素晴らしく、物心ついたお子様のいる家庭には訪問販売に行ってもいいくらいだろう。






「全部ぺロリ」

 物語における動物の中では、ネコは狡賢かったり、残酷であったりすることが比較的多い。キツネ、タヌキ、オオカミと並ぶ悪役動物四天王であろう。