アサラ

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「塔を建てよ」

 

厳かに彼は告げた。

 

「塔は地上と天を繋ぐ構造物。我が国の威厳を知らしめるのにこれ以上のものはない」

 

集った建築士たちは黙って聞いている。

 

「この国で一番多く」

 

壁材の買付人を多く雇わないと。

 

「この国で一番高く」

 

優れた職工を探さないと。

 

「この国を最も彩った者に」

 

次の言葉は分かっている。

 

「望むままの褒美を与える」

 

Rule&Analysis

 

 数千の塔が立ち並ぶ国「アサラ」が舞台。

 

 この国で最も多く、最も高く、最も立派な塔を建設するのが目的だ。

 

 ボード大きめの立派なボードゲームだが、実はルール自体はシンプル。マストフォローを利用したワーカープレイスメントである。

 

 ゲームは4ラウンドあり、毎回ラウンド終了時に、建てている塔の数や塔に付いている「紋章」の数に応じて点数が入る。最終的には5色ある塔それぞれについて、一番高く建てた人、二番目に高く建てた人、がそれぞれ点数を得る。また塔の色に関係なく、世界で一番目、二番目高い塔を建てた人、世界一番多く、二番目に多くの塔を建てた人、にもそれぞれ点数が入る。要は、沢山建てろ高く建てろ、ってことだ。

 

 塔を建てるためには、「部品の買い付け」と「部品を所持した状態での建設」というアクションが必要だ。これは手札として配られる『買付人カード』をプレイスすることで選択可能である。そしてここに前述のマストフォローが加わっている。『買付人カード』は5色。ラウンド中に、誰かがあるアクションに『買付人カード』を置いたら、以降そのアクションはその色の『買付人カード』でしか選択できなくなるのだ。好きなカード2枚で任意の色として良い、という救済もあるが、単純に枚数はアクションの数なので、手数の面で損をすることになる。余ったカードを5Gに変換するアクションもあるので、カード枚数は減らさないに越したことはない。

 

 塔のパーツは、土台、真ん中大き目、真ん中小さ目、先端、の4種類。土台と先端があることが塔の最小単位であり、どちらかが欠けた中途半端な状態で建ててはいけない。アサラの建築法にひっかかるからだ。土台と先端だけの2階建て「マーテロー塔」であっても、後から好きなだけ継ぎ足せるので、ゆくゆく「スカイツリー」にしたらいい。

 塔は色によって部品の価格が違う。茶が最安、白が最も高値となる。もちろん最終勝利点もパーツ価格に比例して高くはなる。一方、単純に最も高くしやすいのは茶塔になる。しかし世界一高い塔を建てても、そこまで爆発的な点数は入らないので、5色の塔をしっかり建てるほうが勝利には近づく。とりわけ白塔と黒塔の勝利点は高いので、是非1位か2位を押さえておきたい。

 

 ゲームの根幹はこんな感じ。ルールも難しくなく、見た目も美しいコンポーネント、ジレンマあり、妨害あり、さらに上級向けの選択ルールもあり。といった正に優等生なゲームである。チケットトゥライドやロンド、フレスコといったゲームと同様に、「まずどのゲームからやってみようかな」と考えている、これから始める人たちにオススメしたいボードゲームだ。凄い「パンチがある」わけではないが、ある程度、年齢、性別、経験問わず楽しめると思う。