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「このゲームはルールが複雑過ぎる、ヘビーゲーマーにしか受け入れられず、売り上げは伸びないだろう」
クラウス・トイバーの作った『あるゲーム』に下された評価です。最初は出版社に取り合ってさえもらえませんでした。交渉の末、ようやく小さな会社が出版してくれることになりました。
その小さな会社『コスモス社』は今や業界を代表する大手です。
何故かって?
20000000
そのゲームの世界累計販売数です。
ボードゲームの王、ドイツゲームルネサンスの先駆け、様々に形容される1995年のドイツゲーム大賞は、今このときも世界のどこかで遊ばれていることでしょう。
上述の通り、歴史に名を刻んだボードゲーム。
毎年、世界選手権も開催されている。現王者はオーストリア、日本代表が制したことはまだない。
無人島カタンを最も開拓出来た者が勝者となる。毎回誰かの手番の前にサイコロが振られ、出目に応じて資源が貰える。この資源を使って街道や開拓地(都市)を作っていくのだ。
これがボード。ランダムに六角形のタイルを敷き詰めて作る。なので毎回違った島になる。タイルは産出される資源に対応して5種類。
5種類ある資源は、木材、レンガ、羊毛、小麦、鉱石。上図のように作りたいものによって必要な資源が違ってくる。そして作ったものによって勝利ポイントを得られ、最初に10点に到達した人が勝者となる。
細かい所は端折ったが、流れとしてはこんな感じ。
さて、何故このゲームが歴史に残るほどの傑作になったのか?
勿論、面白いからだ。
補足すると、ゲームを抜群に面白くする画期的なシステムが組み込まれていたからだ。
それが『交渉』システムである。
サイコロを振って、土地に書いてある数字に応じて資源が出るのだが、全員もらえるわけではない。その土地のいずれかの頂点に開拓地か都市を建てているプレイヤーのみだ。つまり開拓地の位置によっては、得れる資源と得れない資源がある。
そこで『交渉』の出番だ。
ルールや制限は無い。好きなようにプレイヤー間で資源のトレードを行えばいい。
これによって生じる「正の作用」はあまりに多い。
まずは、プレイヤーと直接やりとりをすることで、「ソロプレイ」感がなく、和気藹々とゲームが楽しめる。
A「鉱石いる?小麦欲しいんだけど」
B「いいよ、小麦あげるよ」
C「おっと俺なら小麦にレンガもつけるよ」
D「待て待て、こっちは小麦2つだ!」
わいわい、がやがや…
楽しそうでしょ?
そして、お互いに及ぼすことの出来る影響が大きいということ。2位以下が徒党を組むことでトップ叩きも容易だ。トップは交渉してもらいにくく、逆鎖国モードになってしまう。詰まる所、毎回接戦になりやすいのである。慣れた人達がやると、勝負は一巡差、なんてよくあるハナシ。
システムに交渉を取り入れるのはこのゲームが初めてではない。1935年に発売された、かの高名なモノポリーにだってあった。しかし、カタンの『交渉』は物々交換と単純であり、その資源から得られる結果がわかりやすいことが、敷居を低くしているのだと思う。あんまり難しい交渉だと、ゲーム慣れしていないと行いにくいだろうし、ゲームに慣れた人にいいようにやられてしまうこともあるだろう。
『簡単で自由な交渉』
これが万人受けするゲームの基盤になったのではないかと推測される。
多少まどろっこしく書いたが、要は、毎回違うボードで、卓を囲んでいる人とわいわいやりながら、接戦を繰り広げる、時間のかかりすぎない、お手頃なボードゲームというわけ。
これは売れる訳だ。
世界で最も有名なドイツ語三大固有名詞は、
『カルテ、バウムクーヘン、カタン』
で間違いないであろう。
初心者と経験者でもそれほど致命的な差は出にくいと思うけど、初心者には「鉱石の確保が一番重要なこと」「港の有効利用を視野にいれること」くらいをアドバイスしてあげるといいように思う。
ルールは決して複雑ではない。細かい取り決めが多いだけで、むしろ昨今のヘビーゲームと比べると簡単な方だ。一回やれば余裕で 覚えられる。
是非ともこのゲームは数回やってみてほしい。きっと次もやってみたくなるはずだから。
ちなみに今管理人が最も欲しいものの一つが『3Dカタン』である。
見よ、この美しさ!
え、価格?
10万円くらいですが何か?