バトルライン

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A.C.333

 

遂に我が軍はイッソス湾にてダリウス王のペルシア軍とまみえり。敵軍は10万兵、我が軍は4万兵にも満たず。

 

敵将ダリウス率いる中央の精鋭軍は、統率されたファランクスを敷き、劣勢強いられる我が戦線は後退す。また敵の右翼大隊も海岸部より中央へ旋回、挟撃を受け我が司令部の陥落は避け得ぬ事態となるべし。

 

しかし我が将、其地に座さず。

 

我らが精鋭は左翼なり。左翼の先陣を切るは我が王。ウェッジにて戦線一閃、突破為すべし。かくしてペルシャは彼の王の足許に墜つ。

 

堅甲利兵を知略縦横にて役す、これぞマケドニアの戦極意なり。

 

此の勝利を皮切りに、必ずや先代よりの悲願、大帝国の創設を成し遂げるであろう。讃えよ、我らが偉大な王の名は・・・

 

Rule&Analysis

 

 クニツィアによる二人用ゲーム。スリーポーカーで行う9か所のフラッグ争奪戦。

 カードは6色の1~1060枚からなり、手札は6枚。ゲームは、お互いに9か所あるフラッグの前に一枚ずつカードを出していき、その「役」の強さを競うというもの。「役」の強さは厳密なスリーポーカーとは異なり、このゲーム用に調整してある。

 

 

以下、強い順に、

 

 

 

1『ウエッジ(楔形)』

  = ストレートフラッシュ

 

 

2『ファランクス(方陣)』

  = 3カード

 

 

3『バタリオン(大隊)』

  = フラッシュ

 

 

4『スカーミッシャー(散兵)』

  = ストレート

5『ホスト(密集)』= ブタ

 

となる。同じ「役」なら合計値が高い方が勝ち。

 

 これを9か所で行い、過半数の5か所で勝つ、または連続した3か所で勝つ、ことが出来たら勝利となる。

 さらにこのゲームは、決着のつく形の「3vs3枚」にならなくても、場にあるカードを参照して、「こっちの役を上回れない」ことを証明することでもフラッグを獲得できる。

 

 また『戦術カード』というものがあり、使用枚数に制限はあるものの、いずれも一発逆転を狙える強力な効果がある。何にでもなるワイルドカード、そのフラッグにおいて役を無効化し合計値勝負に変更、そのフラッグを4枚勝負に変更、などがある。

 

 

 Battle line(戦線)というタイトルであるが、このゲームは最前線で激しく斬り合うゲームではない。我慢に我慢の防衛線である。『必ず1枚出さなければいけない』というルールのためだ。

 

 中盤以降はどうしても「使い道のない」カードで出てくる。しかし『破棄』はないのだ。必ずどこかの戦線に送り込まねばならない。例えそれが戦線(役)を崩壊させることになっても、だ。当然負け戦(ゴミ捨て場)が発生してしまうのだが、その場所も無限ではない。つまり、ウェッジやファランクスを狙っていて、最後の一枚を待っている状態では、そこは空けておかねばならないし、さらに連続3か所負けてもいけないので、危うい要所はなるべく強い役でいきたい、など空き場所に全然余裕がないのである。

 そして、基本的には先出しは不利である。先手が「7」を出したところに、後手が「8」を合わせる。ね、不利でしょ。同じ「役」なら合計数が大きい方が勝つのだから当然だ。この後、先手は意地でも強い役にしなければいけないが、後手は最低同じ役で合わせればいい。

 

 この2点、手役が完成するまでの戦線のやりくり、先に動いたら不利、というポイントが、このゲームを『洗面器ゲーム(我慢比べ)』と言わしめる理由である。

 

 3か所連続獲得で勝敗が決するということは、一番大事な戦場は両側からそれぞれ3番目であると言えよう。ここを押さえれば、その外側2か所はゴミ捨て場に出来る。

 「役」の強弱調整も良く出来ている。最強の『ウェッジ』が成立する確率は高くはない。そして、ウェッジに失敗した時のセカンドベストは『バタリオン』なので『ファランクス』に劣る。『ファランクス』が成立する確率は『ウェッジ』より高いため、どちらを狙っていくか迷うところだ。

 

 戦術カードは強すぎるので、派手なゲーム展開を望まないときは無しでもいいかも。まあ、こういった大味なカードで盛り上がることも醍醐味であるので一長一短。いずれにせよ、場のカードを確認し「だからあなたは勝てない」と証明するのはとても気持ちいい。

 

 

 アレキサンダーの先生はアリストテレスであったという。洗面器から顔を上げた後は、「万学の祖」「論理学の父」たるアリストテレスような華麗な証明を。

 

Quod Erat Demonstrandum

 

 ま、このセリフはアルキメデスなんだけど(笑)