ヒューゴ

ドアの閉まる音、そして静寂、ふたつの息遣いを除く

「どうやらやり過ごしたみたいだな」

「そうね」

ふたりが飛び込んだのは回廊の一室

部屋は窓が無く常闇であったが、男がオイルライターを灯した

向かいの女性の顔を照らし出す

恐怖からだろう、青白く見える

 

愉快なダンスパーティーは突如終了した

屋敷の地下から現れた得体の知れないもの、あれはまるで…

「くそっ、そんなものが存在してたまるか」

「そうね」

「なんとかこの館から逃げ出さないとな」

そう言って、男は気づいた

入ってきた扉の内側にはノブが付いていないことに

 

「なんてことだ、これでは出られない」

「そうね… あなたは」

 

横を見た男はすっとドアをすり抜けていく女性を見た

そしてライターのオイルは無くなり

 

男は独りになった


Rule&Analysis


古くは

『ミッドナイトパーティー』

という作品。作者はクラマー。


最近再販されて

『ヒューゴ』というタイトルで日本語版が出た。


これは登場するお化けの名前である。

ゲームは以前紹介した『ねことねずみの大レース』に似ている。

正確にはこちらの方が古いのだけど。

 

ルールは、

オバケのヒューゴ君に捕まる前に部屋に逃げ込め

である。


 プレイヤーは複数のコマを有するが、サイコロの目の数だけ誰かひとり移動可能となる。



 サイコロの目は1、2、4、5とオバケの目2つ、である。

このオバケの目が出ると、ヒューゴ君は3マス動くのだ。捕まってしまうと地下室に連行されてしまう。早いタイミングで捕まるほど失点が多い仕組み。3ラウンドで失点合計の少ない人の勝利である。

『ねことねずみ』との相違点について説明しよう。

 

まずは初期配置

このゲームは順番にひとりずつコマの初期位置を決めていく。

最初は1コマ1マスなので、並べ終わると下図のようにずらっと整列する。(取説より抜粋)

そして逃げ込む先

部屋にはひとりしか入れない。逃げ込んだ部屋には中から鍵をかけられてしまうというわけ。何となく気持ちはわかる。

 

部屋には既にオバケがいてマイナスをくらってしまうこともある。ただし、地下室に連行されるよりはマシなので妥協案。

 

また逆に部屋に入ると得点になることもある。

この位置。

何故かというと理由は簡単。圧倒的に捕まりやすいからだ。

 

オバケは最初、地下室の奥深くにいるので、出てくる前に逃げ込めそうな気がするだろう。


否!


部屋には最初から入れるわけではなく、オバケが回廊に飛び出してきてからしか無理なのだ。

さらにこのプラスの部屋はちょうどの目しか入れないのだ。

 

一番近い部屋は、オバケが回廊に出てから2回の移動で捕まってしまうので、それまでに6分の1の目を出す必要がある。最悪、めぐり合わせによっては自分がダイスを振る前にノーチャンスで捕まることもある。おまけに誰かが先に入ればもう入れないので、後はすぐ背後に迫るヒューゴ君の捕まり待ちとなる。

もうこの顔もなんだか怖く見えてくる。

 

というわけで、基本戦略はオバケからなるべく遠いところに位置し、率なく部屋に飛び込んでいくことだろう。

 

ルールは簡単だが、しっかりジレンマも組み込まれており、子どもから大人まで楽しめるゲームである。

コンポーネントでは『ねことねずみ』に軍配が上がるが、

ボードゲームでは数少ない「8人までプレイ可能」という大きな利点があるため、両方持っていても問題は無いのだ。