ビブリオス

 

子どもの時、

チョークで書かれた黒板を写したことがあるでしょう?

板書です。

 

なぜそんなことをしていたのか?

 

休み時間に消されてしまうから。

 

 

中世において、

修道士たちはひたすらに本を写していました。

写本です。

 

なぜそんなことをしていたのか?

 

複製しないと永遠に失われてしまうから。

グーテンベルグの活版印刷発明は15世紀。

 

 

 

子どもの時、板書したノートに落書きもしたでしょう。

 

中世において、修道士たちも写本に絵を描きました。

最初は落書きだったのか、それとも装飾だったのか、はたまた信仰だったのか。

今となっては知る術はありませんが、修道士たちによって華麗に彩られた写本は各地に伝えられています。

 

アイルランドの国宝『ケルズの書』

ロンドン大英図書館の『リンディスファーンの福音書』

世界最古の写本『ダロウの書』

 

 

そんな聖書を生んだ写字生達に告げられた句。

 

「正確に集中して書きなさい。私だったら間違いだらけの一冊よりも、正確な一部分の方を持っていたいと思うから」

~聖職者アンセルムス~

 

Rule&Analysis

 

 活版印刷が発明されておらず、まだ書物が貴重な中世。この時代に、『写本』を行うことで誰よりも書物庫を充実させるのが目的。

 

 ゲーム中に5つの分野に属するポイントカードを集め、ゲーム終了時に各分野ごとのポイント合計を競う。各分野で1番ポイントを集めた人のみ、その分野ごとに定められた勝利点数が貰えるという仕組み。

 

 

 ゲームは前半、後半に分かれている。

 

 前半は寄進フェイズ。手番に行うことは、「プレイ人数+1枚」だけ山札をめくり、それぞれのカードを①自分の手札に1枚、②競り用に1枚(後半使用)、③残りは共通の場、に分類する。共通の場に置いたカードは、手番が終わる直前に左隣の人からドラフトしていく。つまり共通の場に置いたカード達は、他のプレイヤーが獲得すること確定なのである。こうして皆の手元に1枚ずつと、競り用に1枚ずつ置かれて次の人の手番へ、という流れ。X枚同時に山札からめくるのではなく、1枚ずつ規定枚数までめくる、という方法であることに注意。

 

 後半は競りフェイズ。前半に「競り用」に分けたカードを順番に競り落とす。競りに使う「お金」はいつ手に入れるのか?実はこのゲームにはカードの種類が3種類。「分野カード」「お金カード」「教会カード」だ。なので前半の寄進フェイズで獲得した「お金カード」が競りで使える金額なのだ。もちろん競り用の山から「お金カード」が出てくることもある。「お金カード」を競り落とすときは、金の代わりに『手札からいらないカードを何枚捨てるか』で競り合う。

 

 まだ「教会カード」に触れていなかった。各分野で1番を取った時の勝利点は、デフォルトで『3』である。しかし、この点数はゲーム中に変動する。変動させることができるのが、この「教会カード」なのだ。要は自分の強い分野は勝利点を上昇させ、勝てる見込みの無い他の分野は勝利点を下げる、という使い方をするカード。これはゲーム中に獲得した時点で効果発動する。

 

 以上を全て終えたら、各分野カードの合計値を計算し、1番の人のみ、そのジャンルの勝利点を得る。5分野あるので5回得るチャンスがある。勝利点合計が最も高い人が勝利。

 

 さて、ルールは分かっただろうか。多分イメージは湧いていないだろう。私は取説読んでもピンとこなかった。おそらくテキストでは伝わりにくいのだろうな。やることは非常にシンプルなのだが、どうも文章にするとまどろっこしくなってしまうので、ゲームのイメージが出来ていない始める前には「これ面白いのか」といった印象であった。

 

面白かった。

 

 『ドラフト』と『競り』が同時に楽しめるが決して複雑ではない。そんなシンプルにまとまったシステムなのに熱い駆け引きがある。欠点はルール説明を文章にすることの難儀さとテーマとゲーム内容がリンクしにくいことだけだ。

 

5種ある分野カードは大きく2つに分けられる。

 

234点がある、『修道士(茶)』『顔料(青)』

12点のみの、『聖書(緑)』『手稿(橙)』『禁書(赤)』

 

 枚数も決まっているため、それぞれ総合計の過半数を取れば獲得は決定である。計算すると、『茶』『青』は13点、『緑』『橙』『赤』は6点押さえればいいことになる。実際には、プレイ人数によってランダムで数枚使用しなくなるため、絶対という数字ではないが、ひとつの目安にはなる。5分野全て1位は不可能なので、勝つためには23分野で1位を取ることが目標。途中からは獲得する分野を絞って、なるべく過半数に近い点を目指すのだ。

 

 あとは「競り用」に分配されたカードも重要。共通の場におくと必ず自分の手には入らないので、お金さえあれば再獲得のチャンスが来るこの「競り用」に、すぐには使いづらいカードや獲得するか様子をみたいカードが良く分配される。前者は「教会カード」、後者は「勝敗を左右する第3の分野カード」といったものが該当するだろう。そんなわけで、勝負どころの競りの時、お金が無い事だけは避けたい。特にゲーム後半の「教会カード」は勝敗に直結するので多少無理しても落としたいところだ。

 

 これはやってみないと面白さが分からないであろうゲームの一つ。ゲーム初級者から上級者まで是非ともプレイしてみて貰いたい。

 

 最後にもうひとつ欠点を思い出したので追記。

 

 このゲームのコンポーネントは良く出来ている。箱は本をモチーフとしたデザイン、磁石でくっつく蓋、裏表紙には絵付のカード一覧、5色のサイコロ、しっかり作ってあるカード、そしてカードを取り出しやすいように指をかける「窪み」まで作ってあるのだ。

 開封した私は感動し、いざカードを全て取り出して眺めんと「窪み」に手をかけた。

ん?

 

・・・

 

お分かり頂いただろうか。「窪み」が中途半端なため、結局半分くらいカードは取り出せないのだ。

 

作るんならしっかり「深さ」考えんかい!

 

という話。