「印象派」の隆盛から時は立ち、
芸術は新たな時代を迎えたと言われる。
サインをしただけの便器は3億円
天井の「YES」は運命の出会いを
アニメ調のコスモスがベルサイユ宮殿を飾る
これらは新たな時代?
何もないところに見たことのある風景を描くか
何もないところに見たことのない何かを作るか
それだけの違いだから
同じだろう
誰が認めて、誰が貶して、誰が値をつけ、誰が買うのか
人間「様」である
移ろう人が評価するのなら、価値だって移ろうに決まっている
じゃあ何を信じればいい?
簡単だ
『私の作品は議論の必要はなく、ただ愛するだけでよい』
~Claude Monet~
ね、同じだろう
この作品も入手難であったが、この度ニューゲームズオーダーさんより日本語版が発売された。
先に言うが、ちょっとでも興味を持ったらプレイ、または購入をオススメする。ズバリ、ボードゲーム史に残る傑作である。
基本はマスターズギャラリーで説明したように、場に多くある
絵画(カード)ほど価値があり高く売れるので、そのカードを多く
集めて売るのがゲームの基本姿勢。
カードの集め方が、簡易版となる『マスターズギャラリー』では手札から場へのプレイ、要は自分の手札のカードしか選択肢が無かったのに対し、本家『モダンアート』ではここに「競り」を導入している。つまり誰かの手からプレイしたカードを皆で価格をつけて購入していくのだ。
『マスターズギャラリー』はここを省いたので「いかにトレンドを作り、そのトレンドにのっかるか」が唯一の焦点であったが、
それに加えてモダンアートでは「如何に高い価格で買わせるか、安く手に入れるか」といった資金のマネージメントが要求される。
最終的にはお金を一番稼いだ人の勝ちだ。
総じて分かりやすい競りゲームになっている。
ちょっと流れをまとめると、
1.誰かが手札から一枚競りにかける
2.カードの指示した競りを行う
3.買えた人は場に出した人にお金払って購入、自分の場に
(自分で買ったときはお金は銀行に払う)
これを繰り返してある絵の5枚目が場に出たら決算。
これを4ラウンド行う。
さて、競りは全部で5種類。カードにアイコンで示してある。
1.公開競り:自由に値付け。最高値つけた人に売る。
2.入札:拳にチップを握る。せーので開示。
3.一声:左の人から順に一回ずつ値付け。自分が最後。
4.指し値:競売人が値段を決め、左から順に買うかどうか選択。
5.ダブルオークション:同じ種類2枚同時。
(競り法は2枚目のアイコンによる。)
何故こんなに種類があるのか。競りなんて一種類でいいって?
否!
これこそクニツィア最高のアイデアなのだ。
公開競り。
あまり乗ってこない人がいれば、その人は手札にそのアーティストが少ないのだろうし、乗ってくる人はその逆だ。全員の思惑を探るのに最適。
勿論、それを加味して悪戯に値を釣り上げることだって出来る。
入札。
一発勝負なのでオープンオークションよりも各々の思惑が
ストレートに出る。
指し値。
欲しがっている人の足元を見るのは当然。
さらにはこんな使い方も。
自分はyokoをトレンドにしたいのに興味がなさそうな下家。しかし敢えてyokoを格安で売る。その絵をトレンドにしたい人が増えるから必然的に以降トレンド作りは有利だ。
汝の隣人を愛せよ。
一声。
最後が自分、つまり自分が一番手にいれやすいオークション。ある意味自作自演。しかしあからさまだと上家が値を吊り上げる。
ばれないように、ばれないように。
ダブルオークション。
場の均衡を変える強力な手。当然かなりの額が動く。
足元を見る「指し値」、場を熱くさせる「公開競り」、
もちろん「一声」で自分が狙ってもいい。
ただの競りが相手の思惑を読む手段にもなり、勝負をしかける一手にもなり、相場をコントロールする方法にもなる。
自分の思いやメッセージを5種類の競りにのせるのだ。
これは凄いシステムである。
文章でピンと来ない人は実際何度かプレイしてみるべき。このゲームの凄さに気付くだろう。
細かいことかもしれないが、変に勝利点とかに換算せず、そのままお金自体で勝負を決めるシステムも、当然ながら秀逸だ。このゲームはそのラウンドで絵が売れた時の値幅も非常に分かりやすいため、そのままお金で勝つルールが実に思考をシンプルにしてくれる。稼げばいいのだ。金こそ全て。人生ゲームとおんなじだ。
とまあベタ褒めなのだけど、少し気になる点は、やはりダブルオークションが強い点か。このカードが手に多い方が有利な気がする。何回か遊ぶうちに打破する新たな戦略浮かぶかもしれないが。
文頭にも書いたが、ボードゲームに少しでも興味を持った方は
是非手にとって頂きたい。様々なサイトで書かれているが、
まさに「競り」ゲームの金字塔。
近代芸術の価値はうつろいやすいが、
このゲームの面白さは不動である。