成敗

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この世は銭が全てである。

 

越後屋のこの信念は今や現し世に顕現されており、彼は莫大な富にて国の中枢をも動かせるほどの存在になった。一代で築いたこの富は、当然ながら清廉なものではない。

 

「下賤の者が割を食ったからといって何が悪い」

 

騙し、貶め、奪い取った者たちが、『成敗人』を雇ったと聞いた。

 

今宵の彼の庭には番犬がひしめき、屋敷にはごろつきや用心棒が溢れている。金さえあれば身を守ることも容易い。懐には南蛮の商人から手に入れた短筒もある。越後屋は近々、この殺傷能力の極めて高い武器を諸国に売りつける予定であった。

 

「いざとなればこの抜け道もあるしな」

 

まさに盤石。彼は何気なく脱出経路が隠されている掛け軸をめくった。特に何かを感じたわけではない。しかしその仄暗い通路にはなぜか見知らぬ男が居た。越後屋は「彼はいったい誰だろう」と考えたが、答えが出る前に意識は暗転し、「なぜここに居るか」まで考えることは出来なかった。

 

 

『罪だけ斬れる剣はなし… いずれ地獄で出会おうぞ…』

Rule&Analysis

 

 各々キャラクターを選択し、プレイヤーと同数いる悪人を「一人一殺」する協力型ゲーム。全員が「成敗」に成功するとプレイヤー側の勝利。

 

 

 プレイヤー側には「支度カード」、悪党側には「状況カード」というものがある。

 まず、悪党にはそれぞれ「状況カード」が数枚付加される。これは非公開情報であり、基本的には「成敗」のときまで分からない。悪党のパラメータを上げるものが多いが、中には事前に知っておかないと「成敗」が非常に困難になるようなカードも隠れている。これは後述。

 一方プレイヤーには、初期手札として7枚の「支度カード」があり、これを使用するとパラメータが上がったり、悪党の「状況カード」を確認できたりする。「成敗」までには10時間の支度時間が与えられ、これらの「支度カード」を時間というコストを支払ってプレイしていく。例えば『鍛錬:撃+2』には1時間かかる、といった具合。

 

 「成敗」の際は、閃(早い方から攻撃)、撃(与えるダメージ)、命(ライフポイント)、のパラメータで判定する。お互い1回ずつダメージを与え合うが、先制されて「命」が尽きてしまえば反撃は出来ない。引き分けも有り得る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このゲームの面白さは、何と言っても悪党の「状況カード」にある。厄介なものは、「支度カード」で事前に破棄することも出来るので、この情報は非常に大切で命運を分けるものとなる。おそらく事前に知っておかないと敗北するものとしては、『抜け道:命+99』、『病の伴侶:勝利条件を失敗に変更』、『実は善人:勝利条件を失敗に変更、破棄不能』あたりだろう。勝利条件が失敗になるということは、殺さず殺されず、つまり引き分けに持ち込まねばならない。

 

 『実は善人』に殺意100%で揚々と向かっていき、鮮やかに切り捨てる・・・これではどっちが悪党だかわからない。

 

 そうならないためにも事前に「状況カード」を確認に行くわけだが、中には確認したときに効果を発揮する罠となるカードもあり、『偽情報:2時間消費』、『待ち伏せ:全パラメータを-2』などがある。これらは受けるとかなり痛い。

 

 支度10時間という設定に余裕はない。敵情報の確認と自身の強化をバランス良く行う必要がある。勝利するのはかなり難しく、我々は11回目で初勝利となった。ゲームの特性上、非常に多彩なドラマが生まれるのが特徴。

 これについては『いずれコラムでまとめようぞ』