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「そろそろお前達3人の中から後継者を決めようと思う」
王の言葉に王子たちはどよめきました。
「そこでだ、一番優れた城を造ったものに王位を譲ろう」
青空の見える玉座の間。
先日の大嵐でお城の大半は崩壊してしまったのです。
「あと暗殺とか破壊とかは禁止ね。物騒な中世じゃないんだから」
「ようこそ我が城へ」
第一王子は言いました。
天まで届かんとする塔がそびえる立派な城です。
「この塔は隣国に対する物見台と有事の際の砲台も兼ねていますし、なにより城下町の見晴らしは最高ですよ。王室は最上階です」
「た、高すぎるわい!」
20階もの階段を登った年老いた王は、息も絶え絶えに答えました。
「ようこそ我が城へ」
第二王子は言いました。
数多くの防御門を備えた広大な城です。
「この門の数と質は、並の破城槌では突破出来ませんよ。王のために段差もありません。ばりあふりー、という最新技術です」
「・・・で玉座は?」
「ここから7kmほど先ですが」
すでに城門から3kmほど歩いていた王は、溜息をついて自分の城に引き返しました。
「我が子ながら阿呆ばっかじゃのう・・・」
玉座で嘆いていた王は天井を見上げました。
ふと気づきます。
天井?
「直っておる」
嵐で壊れた王城がいつの間にか修繕されていました。
「物騒な世の中じゃないなら、同じ城でいいじゃないですか」
最も優れた城の中で、第三王子はのんびりと話すのでした。
陣取りを作らせたら右に出るものはいないクラマー。
彼が作り上げた立体陣取りゲーム。
2000年のドイツゲーム大賞。
各プレイヤーは王子・王女となり、災害で崩壊した城を建て直す。一番立派な城を建てたプレイヤーが王位継承、もとい勝利となる。
ゲームはアクションポイント制。
毎回5ポイントの範疇で行動を選択していく。
塔ブロック一個置くのに1ポイント、騎士をひとり配置するのに2ポイント、って感じ。
最終得点は『広さ×高さ』で計算。敷地5で高さ3なら15点だ。
さて、これがなぜ陣取りに分類されるのか?
理由はふたつ。
ひとつ目は敷地に限界があること。
もともと城の基盤が8ヶ所あるので、ここから城を拡大していく。
しかしマップは8×8の64マスしかなく、さらにルールで「他の城に隣接するところには置けない」というのがある。
合併禁止。『アクワイア』のように拡大・吸収はしないのだ。
もうひとつは高さ。
実は高さを規定するのは城自体ではない。
『自分の騎士がその城で立っている高さ』なのだ。前述の「騎士を置く」というアクションにはこんな大切な意味があるのである。
上図だと、敷地4×高さ(騎士)2で8点ということ。高さ3ではない。
これが面白ポイントで、折角高々と城を積み上げても、他のプレイヤーの騎士により上部に侵入されては苦労水泡となる。
つまり如何に他のプレイヤーに登られないように作るか、また如何に他人の積み上げた城に侵入するかがポイントだ。
平和的に王位継承だ、と説明書にはあるけれど、
どっこい十分「争乱」ではないか。
そしてこのタイプのゲームにはつきものの特殊カード。
トーレスに於いてもかなり強力である。
騎士を一段とばしで登らせたり(普通は一段のみ)、
騎士に他の塔にジャンプさせたり、
アクションポイント自体を増やしたり、
城に侵入し一気に塔を登らせたり。
使った者勝ち級の強さ。通常ルールではこれはアクション使ってのランダムドローなのだが、個人的にはヴァリアントで全員すべて一回ずつ使用可とかでもいいと思う。実力勝負になる。
また騎士が動いて高さを定める性質上、どうしても後手有利なので、2ラウンド目以降は、点数の高い人から、にするといいだろう。
積み上げた高い城壁に自分が立っていると思うと、なんとも爽快な気分になる。人間やはり高いところが好きなのだ。
言葉では「積み方」「騎士の動かし方」の面白さが伝わりにくいと思うので、これもコラムで紹介。こういうアブストラクト系はちょっとした定石を知ると格段に楽しくなるものだ。
是非とも経験者は初見の人にレクチャーしてあげて欲しい。